退職金規程 中退共も 規程作成は慎重に

Q:業績が良くなり、賃金も賞与も少しアップしました。人を増やしたいとも考えています。次の福利厚生的なものとして退職金規程がこれまでなかったことからこれを作成し、社員に手厚くしていきたいと考えています。将来、業績が悪くなったら、と考えると心配なのですが、今は業績も良く、業績が悪くなったらその時は、退職金は払えないので、その旨社員に言えば納得してくれるものと考えています。退職金はお疲れ様の意味とうちは中小企業なので、そのくらいのことは社員も納得してくれると考えております。税務的には問題はないのでしょうか?

A:退職金規程で退職金が定められている場合、会社と社員との約束であるため、簡単に支払わないなどということはできません。

「業績が悪い」「退職金を支払える状況ではない」は理由にならず、退職者が労働基準監督署に相談すれば、直ちに退職金の全額を支払するように指導されることでしょう。

また、退職金は「お疲れ様」「ご苦労様」の意味ではなく、「賃金の後払い」の性質があります。定年退職者には満額の退職金を支払います。中途退職者の「自己都合の退職」であっても、退職金規程の内容にもよりますが、退職金をまったく支払わないということはなく、70%以上の退職金を支払うこととなります。

つまり、退職金規程を作成したなら、退職金を支払うための会社の資金繰りをしっかり見ること。が必要となります。それなら、金融機関からの借り入れと一緒ではないですか?と思われるかもしれません。その通りです。大手企業でいうと、国際的な会計基準に沿って考えるため、退職金は「退職給付債務」となり将来社員に支払うべき債務と考えます。決算に退職金の準備状況を明らかにしなければならないのです。

退職金を金融機関から融資により借りられるから大丈夫という方も中にはいらっしゃいます。しかし、仕入れや外注費など先に支払いが先行するための運転資金、工場設備の修理や新たな機械の導入のための設備資金の融資などのように金融機関から見ると、貸したお金が、利子をつけて、それ以上の利益を生み出すからこそ、金融機関は融資審査を通し、貸してくれるのです。つまり貸出することで、利益を生むという判断のもと、融資が実行されるのです。しかし、退職金はどうでしょう?お察しの通り利益は生みません。 簡単に退職金のための融資は大丈夫などと考えないほうがよいでしょう。

まさに、金融機関からの借り入れと同様に退職金は、会社が抱える借金と同じになり将来の返済が付きまといます。その点を十分に検討したうえで規程を作成して下さい。

中小企業の税務で、「退職給付債務」などと決算書に記載されたとしても、法人税法上は経費とはなりません。決算書上、経費と処理していてもです。

中小企業で比較的に使わせている退職金制度で、厚生労働省が管轄の中小企業退職金共済制度というものがあります。

これは、毎月掛け金を会社が負担し、損金(経費)とはなります。     会社員が退職した時には退職者が自ら中小企業退職金共済に請求し、退職金をもらうという制度です。通常の退職金と異なるのは、会社が退職金を支払うのでなく、共済から支払われるという点です。省略名称で「中退共」とも呼ばれています。退職金を、この中退共で準備するため、新規に加入し、共済金を支払う場合、退職金規程の作成は必要となります。                    会社に貢献していただいた方も、喧嘩状態で退職していった方も、会社から退職金を支払うのではなく、本人に直接振り込まれるということです。

しっかりと検討していただいた上、作成することをお勧めいたします。

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