父の老朽化した家屋の修繕費を息子が負担した場合の注意点

私(醍醐)の父も80歳を超え、正直、住んでいる家も約40年近いでしょうか。

お客様も、私のような状況化に近い方もおられますが、その方から、下記のような質問を受けました。

質問:

父が住んでいる建物が古くなり傷んできたため、見かねた息子が増改築することとなりました。父にこれまでの恩返しのため別居している息子が全額負担しました。この場合の課税関係で注意する点はありますか。

回答:

(増改築部分の贈与)

増改築した部分が、建物の構造上独立していない場合、その増改築部分は建物の所有者である父の所有となります。つまり、父が息子から贈与を受けて増改築したこととなり、贈与税が課されます。

(参考判例)

夫が妻名義の建物を増改築する際に支払った費用について、増改築後の建物全部の所有権が妻に贈与されたとし、相続税法9条にもとづき贈与税課税された事案もあります。(最判昭和53.2.16税資97号239頁)

親が子の所有する建物に修繕を施した場合、民法第828条但し書きにいわゆる「財産の管理」の範囲に属する行為であるというべきであるが、本件増改築はその程度が遥かに修繕の程度を超えているから、これをもって親の財産管理ということは出来ず、親の贈与をもって子が取得した財産というとして、贈与税を課税している判例があります(宇都宮地判・昭和36.10.13税資35号738頁)。

(実務対応)

    1. 増改築した費用を息子が負担しても建物は父名義そのままであるなら、父と息子が金銭消費貸借契約を結び、毎月決めた金額をきちんと返済していく方法。
    2. 建物を増改築する場合、増改築後の建物全体に占める増改築部分の割合を算定し、共有名義にして登記する方法。例えば全体を4、増改築が3とすると、1/4は父所有、3/4は息子所有となります。このような各持分割合で登記を行えば贈与税の課税関係は生じません。

      ただし、次のようにも捉えられるのです。父が息子から3の借入をした後、増改築を行いました。それからすぐに息子に3で売却しています。というように。

      そうすると、父の4の所有権のうち、3が息子に移転されたともとらえられます。

      つまり、父に譲渡所得が発生するのです。

      この場合、借金3を息子に負担してもらう代わりに持ち分4のうち3を買ってもらったということです。税務上、3の借金がある建物を3で売却した、差し引き0円なので贈与したととらえるのです。これを負担付贈与といいます。

      負担付贈与通達(平成元年3月29日付直評5国税庁長官個別通達)の適用があるのです。幸い、3のものを3で売却していますので0円となり、売却から生じる譲渡益は発生しません。

      更に言えば、一般的には居住用の家屋でしたら、居住用財産を譲渡した場合の特例の適用がありますが、親から子供への譲渡なので特例適用はありません(措特31条の3第1項、35条)。

      もちろん、この特例を考えるなら、増改築費用を息子がローンを組んだら住宅ローン控除はあるかといえば、父と息子の共有建物になった、ここまではOK。

      しかし、息子は父と別居しているため、住宅借入金等特別控除の適用はありません。

      父と息子が建物を共有し、同居し、その後、一定の大規模増改築・修繕を行えば適用は受けられます(租特41条1項・13項)

    3. 結論としては、自宅を増改築する前に、息子と建物の名義が共有であり同居、その後、増改築を実施。あるいは、増改築の費用を父から息子に借入返済する形で精算。このようにして贈与税課税が避けられる場合もあります。

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