妻が夫の財産すべてを相続、1億6千万円に満たなければ申告は不要か

質問:

夫Aが8か月前に亡くなり、夫Aの財産は下記に掲げる通りです。

現金と預金の合計額  2,000万円、自宅(土地と建物の相続税評価額)5,000万円

子供は4人なので、相続人は私B(Aの妻)を含め、5人。遺言書はありませんでした。

相続税の基礎控除額は、6,000万円。

基礎控除額6,000万円を1,000万円超えているけど、配偶者の税額軽減の適用が1億6千万円まであるから、配偶者がすべて相続すれば相続税はかからないと考えてよいのでしょうか。そうすれば、相続税はかからないので、申告しなくて大丈夫ですか。

 

回答:

配偶者の税額軽減の適用は、相続税の申告書の提出が適用要件ですので、必ず相続税の申告書を提出してください。

注意していただきたい点を下記に 4つ 記載致しました。

  1. 配偶者の税額軽減の適用は、遺産分割協議書や戸籍等一定の書類を相続税の申告書といっしょに相続税の申告が必要です。相続税の申告期限までに提出してください。
  2. Bさん、お子様4名(相続人)にAさん名義の預貯金がないかの確認が必要です。もし次のようなことがあったら確認が必要です。

・Aさんの定期預金が満期を迎える都度、Bさんの名義に切り替えていた。

・Aさんがお子様名義で通帳を作り、Aさん管理のもと定期積立を毎月行っていた。

・Bさんは主婦で、毎月もらっている生活費からへそくりとして貯めた金額がある。

など、AさんからBさんあるいはお子様への贈与として指摘されるものがあるとすれば、    相続税がかからないどころか、贈与税と相続税のダブル課税になり、とんでもない負担がかかりますのでご注意が必要です。

Bさんやお子様名義の通帳があっても、Aさんが管理・支配したとすれば、実質はAさんの相続財産と考えられるのです。また、夫であるAさんの財産を故意に相続財産から除外しての申告は、悪質な行為とみなされる場合もあります。例え、相続税の申告をしたとしても、配偶者の税額軽減の特例の適用すら受けることが出来ない場合も発生します。最悪のケースとならないようにご注意ください。

3. 小規模宅地等の特例の適用

自宅でお父さんと同居していた子など、一定の要件を満たす方が相続する場合には、小規模宅地等の特例の適用があります。この適用がある場合は、亡くなった夫が住んでいた自宅の土地について330㎡を限度として80%まで相続税の評価額を減額してもよいですよという特例です。なお、夫が事業していた土地があるときにも特例があるので注意です。これもまた、相続税の申告書の提出が要件となっています。

4. 配偶者であるBさんの財産の把握も必要です。

配偶者の税額軽減の適用は受けられても、すべて配偶者であるBさんが相続してよいかということになります。相続人の皆様が納得してそのように決めたのなら仕方ないのですが、Bさんが財産をお持ちの場合、Bさんの財産にAさんの財産も加わって第二次相続(Bさんが亡くなった時の相続)が行われます。つまり、Bさんの財産が多くなってしまうことで、当然、相続税も増えることが予想されます。第二次相続のことまで考えて検討が必要です。

 

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